VVFケーブルによる信号伝送路の製作 (2006/08/18)

電力線通信モデムの信号を流す,VVFケーブルを用いた信号伝送路を製作します.VVFケーブルには100V, 50/60Hzは重畳せず,通信ケーブルとして利用します.簡単な1分岐モデルを研究室内に製作しました.ケーブルの長さは次の通りです.

Line Topology

製作した信号伝送路の写真です.

Line Photo 1 Line Photo 2
Line Photo 3 Line Photo 4

壁埋込コンセント,差込電線コネクタ,などはホームセンターで全て購入できました.さて,伝送特性をネットワークアナライザAgilent 8712ETで見てみましょう.VVFケーブルに信号を挿入・抽出するのに次の結合回路を使用しました.2006年3月に卒業した平田君が製作しました.左が結合回路の写真,右がネットワークアナライザAgilent 8712ETで測定した透過特性です.

Pickup Circuit - Photo Pickup Circuit - Transmission

結合回路には,コンデンサ2個とバランが使用されています.コンデンサは村田製作所の3.3nFのGRM55N2C2D332JY21B,バランはBH Electronicsの040-0092 Category 7 Test Balunを使用しました.040-0092 Category 7 Test BalunはイーサネットケーブルのLCL(Longitudinal Conversion Loss, 縦方向変換損)などを測定するのに使用されます.単価75,000円で購入しました.コンデンサとバランの組み合わせで,ハイパスフィルタ(HPF)になっていて,カットオフ周波数(3dB減衰)は約900kHzとなっています.

配線図のA点にネットワークアナライザの反射ポート,C点に伝送ポートを接続します.D点には何も接続しないものと,Sonyのテレビ受像機KV-19GP2を接続したものを測定しました.測定結果は,次の通りです.図中の"D: No Appliance"がD点に何も接続しなかった場合,"D: TV"がテレビを接続した場合です.

Transmission Property

落ち込む場所が一致しているところは,D点でのインピーダンスミスマッチの結果です.この落ち込む部分では,テレビを繋げた場合は反射率が低くなり,何も繋げない場合の方が落ち込みます.また,テレビを繋げた場合に新たに出てきた落ち込む個所は,テレビ自体のインピーダンスミスマッチが原因です.なお,テレビの電源コードの長さは,分岐点の長さと同程度の約1.8mですので,"D: No Appliance"の谷のちょうど中間に新たな谷ができることが定性的に説明がつきます.今回の100V, 50/60Hzの重畳しない簡単な1分岐モデルでは,信号周波数帯の4.3-20.9MHzは信号が通過することが期待できますが,実際の電力線通信では,さらにインピーダンスミスマッチが増え,高域においては距離による減衰も無視できないものになる,かなり劣悪な伝送路になるものと推測されます.また,接続する家電機器によっては非線形の要素が現れるかも知れませんし,家電機器からパルス性の人工雑音が出るかも知れません.


梅原 大祐 / UMEHARA Daisuke umehara@kit.ac.jp
Last modified: 2020/05/02 13:08
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