HomePlug Turboのパワースペクトラム (2006/08/23)

Netgear XE104 85Mbps Wall-Plugged Ethernet Switchのパワースペクトラムを見てみましょう.この製品で使用されている技術は,HomePlug Truboと名称されています.実験系は次の図のとおりです.

Measurement Model

"Base Station"と"Monitor"は,Sony Airboard LF-X1です."Base Station"で"Monitor"から要求のあった地上波テレビチャンネルのアナログ信号を圧縮されたデジタルデータで,転送します.転送できる方式は,無線LAN,有線LAN,インターネットのいずれかです.ここでは,有線LANを選択しています..途中で,電力線通信用のモデムNetgear XE104を介して,屋内の電力ケーブルとして使用されるVVFケーブルを経由します.信号・電源分離ユニットを使って,VVFケーブルには100V, 60Hzは重畳していません.ここでは,VVFケーブルは通信ケーブルとして使用しています.この,VVFケーブルによる信号伝送路(「VVFケーブルによる信号伝送の製作」を参照)のコンセントで結合回路を通して,スペクトルアナライザで信号の周波数領域を観察することができます.なお,図中のPCはブリッジ構成にしています.

下の写真は,電力線通信信号によるAirboardの"Monitor"(写真左)と普通のテレビ(写真右)の画面です.

TV and Airboard over PLC

画質的には,ゴーストが軽減されているAirboardの方が綺麗です.ただし,複雑な信号処理がなされているので,2秒ほど,通常のテレビ映像より遅れます.測定系の"Monitor"側のPCでそのスループットを見てみました.使用したソフトウェアは,TCP Monitor Plusです.

Throughput of PLC on Airboard

スループットは,平均12Mbp程度が出ていることが分かります.Netgear XE104は,今回の簡単な伝送系においては,HDTVのH.264/AVCのテレビ信号1チャンネル分を伝送するのに問題がないようです.

下の写真は,スペクトラムアナライザによる測定の様子です.

Measurement

スタート周波数は500kHz,ストップ周波数は30MHzです.参照レベルは0dBmで,周波数分解能(RBW)を10kHzとしています.連続信号ではないので,MAX HOLDで測定しました.測定データをプロットしたものは,次のとおりです.

Power Spectrum of HomePlug Turbo

アマチュア無線の7MHz帯,14MHz帯などがマスクされていることが分かります.25MHz付近に現れているのは,放送に割り当てられている周波数帯です.今回の簡単なVVFケーブルの配線系でも無線の信号を受け取ることが分かります.このことは逆に,VVFケーブル上に流れる電力線信号が放射することも表しています.そこで,現在,無線機器に影響を与えないための電力線通信の信号レベルの規制値が検討されているところです.


梅原 大祐 / UMEHARA Daisuke umehara@kit.ac.jp
Last modified: 2020/05/02 13:08
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