アンチエイリアシングフィルタの製作 (2006/10/10)

アンチエイリアシングフィルタの設計」で書いたアンチエイリアシングフィルタを製作しました.

最初に基板の製作には,京都大学電気系教室のCOEコラボレーションスペースのLPKF社製の基板加工機 C100/HF を利用しました.下の写真のうち,左上の写真が基板加工機です.基板加工機を利用するには,右上の写真のコンプレッサを動作させる必要があります.コンプレッサは,電源ON時から空気圧が上がりはじめ,左下の写真のように 07 - 0.85 MPa になれば利用可能です.このとき,基板加工機に供給されている空気圧が右下の写真のように 6 bar になっていることを確認して,基板加工機の電源をONにします.

LPKF photo 1 LPKF Photo 2
LPKF Photo 3 LPKF Photo 4

下図は,基板設計図を Tgif で作成したものです.両脇にある6つの丸(直径0.8mm)は,スルホール用のホールです.村田製作所製のチップコンデンサが 2.0mm x 1.25mm で,チップコイルが 1.6mm x 0.8mm でした.両方とも長い方の両端に電極があります.チップコイルはブリッジ型で電極が下にあるため,切削する幅は小さくした方がはんだづけがしやすくなります.実は,この設計図より切削する幅が大きい基板を作成しましたが,チップコイルのはんだづけはかなり苦労しました.

Antialias2 Design

製作の手順を示します.

  1. (基板設計) 基板加工のデータ作成は,CAD ソフトウェアである を利用しました.CAD ソフトウェア LPKF CircuitCAM PCB で設計しました.下は,設計図を書き込んだ LPKF CircuitCAM PCB のスナップショットです.

    CircuitCAM

  2. (基板加工) 基板加工機 LPKF C100/HF で基板を加工します.加工機の制御は,ソフトウェア LPKF BoardMaster で行います.下の写真は,加工した基板を示しています.作成した基板は,周りをやすりできれいにして,粉末クレンザーで洗い,フラックスを塗布します.ただし,この作業は,次で述べるスルホールのホールを大きくした後にした方がよいと思います.

    Antialias2 Board Photo

  3. (スルホール作成) スルホール作成には,サンハヤト スルピンキット 0.8mm用キット BBR-5208 を利用しました.下の写真は,スルピンキット,ドリル,はんだ除去機の写真です.基板加工機でも,0.8mm のホールを空けていますが,若干小さいらしく,そのままではピンを差し込むのは困難です.スルピンキット附属のドリルの刄を使ってホールを大きくします.使用したドリルは,サンハヤト ミニドリル D-5B です.できたホールにピンを差し込み,両面からはんだづけします.そのはんだをはんだ除去機で吸い取れば,できあがりです.本当であれば,スルホールができるはずですが,はんだ除去機の吸い取りが弱いためか,ホールができませんでした.しかし,今回はホールができなくても問題ないので,このままにしておきます.

    Sunhayato BBR-5208 Photo

  4. (はんだづけ) 次は,チップコンデンサ,チップコイル,コネクタをはんだづけします.一人でもできないこともありませんが,二人で作業した方がよいでしょう.一人がチップコンデンサ,チップコイルをピンセットで押さえ,もう一人がはんだづけをします.下の写真は,はんだづけに使用したはんだごてやピンセットなどの写真です.チップコイルの接触の具合は,テスタなどで確認しながら,進めます.

    Soldering Gun Photo

    ちなみに,最初は,普通のはんだでは難しいだろうと考え,サンハヤト 表面実装部品取り付けキット SMX-51 を購入し,クリームはんだではんだづけしようとしました.しかし,冷蔵庫に保存しなくてはならないのに保存していなかったため,クリームはんだが固くなって,結局使わずじまいでした.また,使用期限があり,だいたい2ヶ月くらいで使用期限が切れます.
以上の工程を経て,完成したアンチエリアシングフィルタが,下の写真です.はんだづけが汚なくて,あまり人様にお見せできるものではありませんが.

Antialias2 Photo

さて,製作したアンチエイリアシングフィルタの特性がこちらの要求を満足するものかをネットワークアナライザAgilent 8712ETで測定します.下の図は,ネットワークアナライザで測定したアンチエイリアシングフィルタの透過・反射特性です.

Antialias2 Spec

30MHz 以下の透過特性では減衰 1.5dB 以下です.30MHz までの特性は十分かと思います.目標では,100MHz 以上では 20log10(28)=48.2dB 以上の減衰を満足する必要があります.これも十分満足しています.なお,シミュレーションによる透過・反射特性は,こちらで確認できます.シミュレーションほどの特性はでていませんが,性能的には十分なものを製作できたと思います.

(追記 2006/10/11) 学生にも作ってもらった結果,チップ部品のキャパシタやインダクタンスのばらつきだと思いますが,特性にばらつきがあります.いまのところ,自分で製作したものが一番,特性が悪いです.


梅原 大祐 / UMEHARA Daisuke umehara@kit.ac.jp
Last modified: 2020/05/02 13:08
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